金利上昇局面において、REIT投資に積極的に取り組む投資家の考え方

投資

REITが割安放置されている背景には金利上昇への懸念あり

不動産投資の選択肢として魅力的なREIT。

東証REIT指数は1,800を下回る状態が続いており、2022年末の2,000超えからはまだまだ低迷が続いています。一方で、配当金利回りは5%を超える銘柄も散見され、歴史的に見ると割安水準にあるものと考えられます。

割安で放置されている要因として考えられるのは、これからの日本の金利上昇インパクトでしょう。ゼロ金利政策が解除され金利が上昇することで不動産セクターの重しになることが懸念されています。

一方で、その金利によるネガティブインパクトはどのくらいあるものなのでしょうか?イメージだけの「金利上昇」では投資判断ができませんので、ざっくりと定量化してみましょう。

1%の金利上昇がREITの収益性に与える影響を試算

足元の政策金利は0.25%、2年国債利回りは0.4%、10年国債は0.9%です。これは10年後でも金利が0.9%と見込まれているという考え方もありますが、今後の金利上昇が現時点でフルに織り込まれていると考えるのは乱暴すぎるため、今後1-2年の間に金利が1%上がると仮置きしてみましょう。そうすれば1%金利が上がるために同様のインパクトがあると考えることができます。

そのうえで仮想的なREIT銘柄としてざっくりと下記の前提を置いてみましょう:

  • REITの総資産に対する有利子負債の割合:LTV = 45%
  • 有利子負債のうちの固定比率 = 80%
  • 有利子負債の残存年数 = 5年
  • NAV倍率 = 1倍(保有している不動産の資産価値が時価総額と同等)
  • 現在の分配金利回り = 5%

わかりやすく、不動産の総資産 = 時価総額 = 1,000として考えてみます。

  • 有利子負債 = 1,000 x 45% = 450
  • 金利上昇の影響をすぐに受ける変動有利子負債 = 450 x (1-80%) = 90
  • 金利上昇の影響を1年以内に受ける固定有利子負債 = 450 x 80% x (1/5) = 72
  • 1年後に上昇する金利コスト = (90+72) x 1% = 1.62
  • 家賃上昇がなかった場合の1年後の分配金利回り = (50-1.62) / 1,000 = 4.84%

よって、金利が1%上昇することで、1年後には分配金利回りが5%から4.84%に16bps悪化することが想定されます。

さらに1年経つとどうでしょうか?

  • 金利上昇の影響を次の1年以内に受ける固定有利子負債 = 450 x 80% x (1/5) = 72
  • 次の1年後に上昇する金利コスト = 72 x 1% = 0.72
  • 家賃上昇がなかった場合の次の1年後の分配金利回り = (48.38 – 0.72) / 1,000 = 4.77%

2年目には当初5%だった分配金利回りが4.77%まで悪化することなります。

よって、金利が1%上がる場合には今後分配金利回りが23bps程度悪化することが想定されます。

REITへの金利上昇インパクトを賃料の引き上げでカバーできるのか?

それではこのインパクトはどこまで大きいものなのでしょうか?

家賃収入の上乗せで十分に相殺が可能なのではないかと想像しています。

分配金利回りが5%の場合、不動産賃貸収入は8%程度と想定することができます(経費を考慮しての5%のため、家賃収入自体はもっと高い)。すると下記の試算ができます。

  • 不動産賃貸収入 = 1,000 x 8% = 80
  • 2年間の金利上昇コスト = 1.62 + 0.72 = 2.34
  • 相殺するために必要な家賃の引き上げ幅 = 2.34 / 80 = 2.93%(複利の年率 = 1.45%/年間)

よって、毎年1.45%ずつ家賃を引き上げることができれば金利上昇インパクトを相殺することができます。

当然、個別の契約内容によって家賃の引き上げが困難なケースもありますし、テナントとの交渉次第であることは前提となりますが、東京のオフィス賃料においては、上昇を期待する余地は十分にありそうです。

例えば、、、

一般財団法人日本不動産研究所が公表している東京・大阪・名古屋のオフィス賃料予測(2024年6月5日発表)によると東京のオフィス賃料指数は2025年に2.7%、2026年に4.4%の上昇が見込まれています。

三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」(2024年7月29日発表)をみても、2024年第2四半期の東京都心部Aクラスビル賃料(月坪)は26,791円と前年同期比+5.6%上昇しています。

これらの統計は当然未来の賃料を約束するものではないため、変動しうるリスクは残りますし、金利上昇幅が拡大していくと賃料の引き上げで吸収しきれない可能性も十分にありえます。

他方で、金利3%くらいまで悪化するというボトムケースを想定しても利回り4%はとれるならむしろ割安と思う投資家には選択肢のひとつとしてREITは有効なのではないかと考えています。

※本投稿は、特定の個別資産への投資を推奨するものではありません。投資は自分で考え、自己責任で行うようにお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました