そろそろ2025年のNISA枠で何に投資をしようかと考える時期でしょう。
eMAXIS slim オルカンや楽天SCHDのような投資信託もあれば、バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)やバンガード S&P 500 ETF(VOO)のようなETFもあります。
みなさん、投資信託とETFは何を意識をして使い分けていますか?
おそらく大半のひとが「なんとなく」で選んでいるはずです。
ネットで調べても「大した差はないので、どちらでも構わない。ほとんど好みの問題」と言われたりもします。
残念ながらそれだと損をしてしまいます。
結論ファーストで言うと、投資信託のほうが再投資時の資本効率が良いためキャピタルゲイン重視の投資スタイルに向いています。
本記事ではその理由を解説していきます。
- 本記事では株式を主な投資対象とした投資信託やETFに絞って解説をします
- 特定の金融商品を事例として紹介しますが、投資はあくまで自己判断・自己責任で行いましょう
- 一般的な税金の扱いに関する記事となりますので、個別の事例は税理士等の専門家に確認をしてください
一般的に言われる投資信託とETFの違い、メリット・デメリット
まずはじめにFactsをおさえるために、よく言われる投資信託とETFの違いをおさらいしておきましょう。
投資信託 | ETF | |
---|---|---|
上場 | していない | している |
取引価格 | 発注翌日の基準価額 | 場中の市場価格 |
発注方法 | 基準価額が分からない状態で注文(ブラインド方式) | 成行/指値注文ができる |
信託報酬 | ETFより高めの傾向 | 投資信託より安めの傾向 |
最低購入金額 | 100円からの安めのものも多い | 投資信託よりは高めのものも多い |
分配金 | 普通分配金・特別分配金 | 普通分配金のみ |
おおよそはこのような形で説明されていることが多いです。
注目されやすいのは上場の有無と取引価格の適時性ですね。結果として、すぐに決まった価格で投資したい人はETFを選び、価格へのこだわりよりも毎月コツコツと積み立てる場合には投資信託が向いている、というような帰結になりがちです。
もちろん、間違いではないのですが、最も重要な違いを的確にとらえているとは言い難いです。
個人投資家からみた投資信託とETFの重要な違い
それでは、個人投資家からみて、投資信託とETFも最も重要な違いとはなんでしょうか?
それは、ファンド(投資信託やETF)が受け取った配当金の扱いとファンド内での再投資の可否です。
投資信託は課税を繰り延べて複利の力を100%活用できる
投資信託は、ファンドが受け取った配当金を投資家に分配せずにファンド内で再投資することができます。敢えて投資家に分配をしないことで、約20%となる所得税と住民税の源泉徴収をせずに配当金を再投資に回すことができるため、複利の力が働き、資産の増加につながりやすい特徴があります。
なお、投資信託の場合は、再投資することができますが、分配をすることもできます。かつ、投資元本(純資産)を払い戻す形での分配(特別分配)も可能ですので、タコ足配当のような投資信託も存在しますので、分配利回りが妙に高い投資信託には注意が必要です。
ETFは課税の繰り延べができず複利の力が80%しか活用できない
ETFは、ファンドが受け取った配当金を決算時に投資家に分配する必要があるため、その都度約20%の所得税と住民税が課税されてしまいます。
再投資をしたい場合には、税金の差し引かれたあとの80%を手動で再投資する必要があります。
複利の力を活用するために追加の手間がかかるうえ、課税後の金額しか再投資できないため、投資効率が低下します。
投資信託とETFの違いを具体的な事例で確認
それでは、ファンドが受け取った配当金の扱いの違いについて、具体的な事例ベースで確認をしていきましょう。
誰もが知っているような銘柄ということで、全世界の株式に広く分散投資をするこちらのふたつをそれぞれみていきましょう。
- 投資信託:eMAXIS Slim全世界株式(通称:オルカン)
- ETF:Vanguard Total World Stock Index Fund ETF Shares(通称:VT)
投資信託のeMAXIS Slimオルカンは分配をせずに再配当を行っている
まず、オルカンの分配方針を確認してみましょう。
しっかりと書いてありますね、「信託財産の成長を優先し、原則として分配を抑制する方針」ということです。
念のため、本当に分配を行っていないのか、実績を確認してみましょう。
投資信託が設定されてからすでに6回の決算を終えていますが、確かに分配実績はありません。
次に、ファンドが受け取った配当を分配せずに、再投資に回している旨を確認してみましょう。
こちらはその旨の明確な記載はありませんが、下図の通り、運用方針から読み解くことができます。
「MCSI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)」をベンチマークとする旨が記載されています。また同じ交付運用報告書も運用経過の説明箇所の注意書きに注目してみましょう。
「分配金再投資基準価額は、分配金が支払われた場合、収益分配金(税込み)を分配時に再投資したものとみなして計算したもので、ファンドの運用の実質的なパフォーマンスを示すものです」と記載されています。
つまり、本来であれば課税される20%の税金分も含めて再投資したものをベンチマークとしている旨が読み取れますので、「MCSI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)」というのは、課税を繰り延べした形で再投資をしていると解釈できます。
よって、複利の力を100%活かして再投資をする運用を行っている投資信託であることが確認できました(※実際には、投資信託の運営費用や米国での受取配当に対する10%の配当課税は控除されたものとなりますが、分配金原資に対しては日本での20%課税されることがなく100%となる)
ETFのVTは継続的に分配を行っている
配当の再投資を行うオルカンに対して、ETFであるVTは継続的に分配を実施しています。
下図の通り、過去10年に渡り、1株あたり毎年$1.5~$2.2の分配を行っていることが確認できます。
配当利回りで言うと、おおよそ1.5%~3.3%程度を推移している形となります。
またVTの目論見書であるStatutory Prospectusを読み込むと下記の記載があります。
利子や配当収入から費用を控除したものすべてを株主に還元する旨を読み取ることができます。
再配当を行う投資信託とは異なり、ETFは配当を吐き出す仕組みとなっていることが確認できました。
キャピタルゲイン狙いは投資信託、インカムゲイン狙いはETF
ここまでの内容を踏まえると、投資信託とETFの使い分けが明確になってきましたね。
キャピタルゲインの最大化を狙うのであれば、投資信託を選ぶほうが賢明です。なぜなら、投資信託はファンドが受け取った配当金を内部で再投資に回すことができるため、20%の所得税と住民税を繰り延べることができるからです。複利の力を最大限生かすことができるため投資資金を雪だるま式に増やすことが可能となります。
反対に、インカムゲイン狙いであれば、ETFを選ぶことをおすすめします。ファンドが受け取った配当金を決算ごとに投資家に還元する性質があるため、ETFを通じて広く分散投資をすることで安定的な配当収入を分配金という形で獲得しやすくなります。
NISAの価値を最大化するなら投資信託がおすすめ
NISAにおいても原則は変わりません。
たしかに、NISAでETFを購入した場合には、所得税と住民税が免除されるため、分配原資を100%受け取ることができるため、それを再投資すれば投資信託と経済効果は変わらないように思えます。
見落としがちなのがNISAの投資枠の消費の観点です。ETFで受け取った分配金で、ETFに再投資をした場合、その再投資金額はNISAの年間投資枠(積み立て投資枠 120万円、成長投資枠240万円)を新たに消費するものとしてカウントされてしまいます。
対して、投資信託の場合には、ファンドが受け取った配当金をファンド内部で再投資に回す場合には、NISAの年間投資枠の消費としてカウントされることはありません。
投資にかかる所得税と住民税が免除されるというNISAのメリットを最大化するためには、年間投資枠の360万円と非課税保有限度額の1,800万円を最大限効率よく活用することが重要です。
最初の投資額のみがNISAの投資枠カウントされ、ファンド内部の再投資により複利の力を生かすことができる投資信託のほうがNISAの価値を活かしやすいのです。