為替ヘッジありの投資信託やETFを選ぶ際の留意点

投資

海外資産に投資をする投資信託やETFには為替ヘッジありとなしが存在

米国株や米国債券などの海外資産に投資をする投資信託やETFを見ていると、「為替ヘッジあり」や「為替ヘッジなし」という記載を見かけます。そもそもどんな違いがあるのでしょうか?

通常は日本から海外資産を対象とする投資信託やETFを買う場合でも、円で購入をすることとなり、日々の基準価格も円で表示がされます。例えば、米国のS&P500指数に連動する円建てのETFに投資をした場合、円高ドル安方向に為替が動くと、ドル建ての海外資産の価値は目減りしてしまいますので、円建てでみると基準価格が下がることになります。これが「為替ヘッジなし」のパターンです。

これからは、日本が利上げをし、アメリカが利下げをする方向性なので、日米間の金利差が縮小するため、円高ドル安に進みやすいと言われています。

そうなってくると、いままで人気だった、オルカンやS&P500系のインデックスファンドに投資をする場合に、為替が悪影響を及ぼすのではないか?と心配になります。

そんな為替の影響を排除してくれるのが「為替ヘッジあり」の投資信託やETFです。海外資産に投資をしたいけど為替の影響を受けたくない!というタイプの方には魅力的に思える商品です。

一方で、そのイメージだけで飛びついてしまうと思わぬ損をする可能性があります。なぜならば、為替ヘッジというのはタダでできるものではなく、それなりのコストが発生するものだからです。複利の力がモノを言う投資において、コストを無視することは賢明ではありません。

為替ヘッジのコストとは通貨間の金利差そのものである

それでは、為替ヘッジコストはどの程度かかっているのでしょうか?

答えは非常にシンプル:ヘッジコスト = 通貨間の金利差

ですので、現状の低金利の円と高金利のドルの間で、円建て資産に固定するような為替ヘッジをかけると、4-5%近いヘッジコストがかかっていることに注意する必要があります。

かつ、この為替コストはいわゆるETFの経費率のように明示化されるコストではないので見落としがちです。そして、見えないコストが投資パフォーマンスを大きく左右することにもなりかねません。

S&P500連動のETFで為替ヘッジあり・なしのパフォーマンスを比較

それでは実際に為替ヘッジコストがETFのパフォーマンスに影響をしているのかを実サンプルを用いて検討してみます。

下図において、3種類のS&P500連動のETFの比較をしました:

  • 円建て(為替ヘッジなし) = オレンジ
  • ドル建て = 赤
  • 円建て(為替ヘッジあり) = 青

ETFの設立期間が異なるので5年の株価チャートと基準価格変化率では分かりにくい部分がありますが、共通して比較できる3年トータルリターン(年率)で比較をしてみると下記のことが分かります。

円建て為替ヘッジなし(21.1%) > ドル建て(10.0%) > 円建て為替ヘッジあり(5.3%)

それぞれの差分を考えてみましょう。

円建て為替ヘッジなしとドル建ての間には11.1%のパフォーマンスの差ががあります。普通に考えるとこれは円安ドル高が進んだことによる為替レートの変更により円建て資産が相対的に増えたということに起因しそうです。

実際に3年前の為替レートは1ドル=110円、現在は1ドル=145円くらいなので、毎年1.1倍ずつ円建ての価値が増えたことになりますので、11.1%の差分の大部分はまさに為替の影響ということになります。

次に、ドル建てと円建て為替ヘッジありの間には4.7%のパフォーマンスの差があります。この差分がヘッジコストということになりますね。実際に米国の政策金利であるFFレートは2023年1月の段階では4.5%を超え2023年夏には5.5%となりそこから維持されている状態です。こちらも4.7%の差分の大部分が日米の金利差で説明ができます。

為替ヘッジあり・なしの使い分け

それでは、為替ヘッジありと為替ヘッジなしをどのように使い分けていくのが良いのでしょうか?

一般的には、今後、円安が進むのであれば為替ヘッジなしがよいですね。上記で検証をした通りです。逆に、円高が進むのであれば為替ヘッジはしておいたほうが良いですが、当面は金利差が残るのでヘッジコストをシミュレーションしながら決めていくことになります。

他方で、投資対象のアセットにも注意が必要です。上記で検証をしたS&P500のような株式資産であればまだしも、期待リターンが金利に直結するような米国債に投資をするのに日米金利差であるヘッジコストをかけてしまうと、債券利回りをほぼ放棄する投資になってしまいます。

正直、安定的な投資で利回り4%を出すのは簡単なことではないので(優良な高配当銘柄でも4%を切っているものが多いことを踏まえ)、日米の金利差が4%以上ある状態でヘッジコストをかけることはかなりもったいないんじゃないかと考えています。

当面は為替ヘッジなしを選択していくつもりです。

※本投稿は、特定の個別資産への投資を推奨するものではありません。投資は自分で考え、自己責任で行うようにお願いいたします。

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